ラジエントヒーターは、キッチンでの調理において静かな革命をもたらした器具の一つです。しかし、その機能やIHクッキングヒーターとの違いについて、詳しく知らない人も少なくありません。この記事では、ラジエントヒーターの基本的な特徴からメリット・デメリットまで、わかりやすく解説します。
1. ラジエントヒーターとは
ラジエントヒーター(別名「電熱器」)とは、渦巻き状のニクロム線を使用した調理器具のこと。ニクロム線の上にはトッププレートが置かれており、通電することで発熱します。さらにこの熱が直接鍋やフライパンに伝わり、食材を調理するという仕組みです。IHクッキングヒーターの登場以前、ガスが使えない家庭でとくに非常に重宝されていました。現代でも、そのシンプルさと手頃な価格で、多くの家庭や施設で使われ続けています。
ラジエントヒーターの製品には、1口コンロや2口コンロといった単体の製品から、IHクッキングヒーターと組み合わさった製品まで、様々な種類があります。生産コストが低いため、3口全てがIHヒーターの機種やオールメタル対応機種(鉄やステンレスだけでなく、アルミや銅などの異なる材質の鍋も使えるIHヒーター)などに比べ、リーズナブルなこともポイント。
国内メーカー製の3口IHクッキングヒーターでは多くの場合、中央奥のヒーターにラジエントヒーターが設計されています。このように、IHクッキングヒーターとラジエントヒーターの組み合わせにより、利便性と経済性を両立させています。
2. IHクッキングヒーターとラジエントヒーターの違い
IHクッキングヒーターとラジエントヒーターは、どちらも現代のキッチンで広く使用されている調理器具ですが、加熱方法や機能、利用できる調理器具の種類など、いくつかの重要な違いがあります。以下でいくつかの視点から、その特徴を比較していきましょう。
2-1. 加熱方法
①IHクッキングヒーターの場合
IHクッキングヒーターは、電磁誘導を使用して加熱します。これは、電磁コイルを通じて交流電流を流すことにより、調理器具自体に熱を発生させる方法です。このプロセスでは、調理器具が加熱源として機能し、熱は直接食材に伝わります。
②ラジエントヒーターの場合
ラジエントヒーターは、電熱要素(通常はニクロム線)を使用して熱を発生させ、その熱をガラスやセラミックのトッププレートを通じて調理器具に伝えます。加熱要素が赤熱することで、熱は放射状に調理器具に伝わります。そのため、調理器具のトップを素手で触ってしまうと、やけどの恐れもあります。
2-2. 材質の制限
①IHクッキングヒーターの場合
IHクッキングヒーターは、磁性材料(鉄や一部のステンレススチール)でできた鍋やフライパンのみを加熱できます。非磁性材料の調理器具(アルミニウム、銅、ガラスなど)は、特別なアダプターを使用しない限り、IH上で加熱することはできません。
②ラジエントヒーターの場合
ラジエントヒーターは材質に関わらず、ほぼすべてのタイプの調理器具で使用することができます。これは、加熱方法が直接的であるため、鍋やフライパンの底が平らで熱を均等に伝えることができれば、材質にかかわらず使用できるのです。
2-3. 加熱速度と効率
①IHクッキングヒーター
加熱速度が非常に速く、調理時間を短縮できる高い効率を誇ります。また、電磁誘導による加熱は、エネルギーの無駄遣いを減らし、調理中の熱の損失を最小限に抑えます。
②ラジエントヒーター
IHクッキングヒーターに比べて加熱速度が遅く、熱効率も若干低い傾向があります。しかし、適切な調理器具を使用すれば、幅広い調理法で十分に活用できます。
2-4. コスト
①IHクッキングヒーター
初期設置コストは、ラジエントヒーターに比べて高い傾向があります。また、IH対応の調理器具が必要になる場合が多く、追加のコストがかかることもあります。
②ラジエントヒーター
比較的リーズナブルで調理器具の制限もないため、コストが全体的に抑えられる傾向があります。
3. ラジエントヒーターの使用がおすすめな料理
ラジエントヒーターはIHクッキングヒーターに比較して熱伝導は低めですが、余熱が残ることや遠赤外線を発することなどの特徴を生かし、美味しく調理することも可能です。以下でラジエントヒーターならではの料理をご紹介するので、お使いの方はぜひ挑戦してみてくださいね。
3-1. 余熱を使って仕上げる料理
ラジエントヒーターのプレートは加熱後も熱を保持し続けるため、余熱を利用してじっくりと仕上げたい料理に最適です。この方法は、料理を温かい状態で長時間保つことが可能で、例えばカレーやシチューといった煮込み料理には特におすすめです。これらの料理は、余熱でゆっくりと熱が食材に行き渡り、味がしっかりと染み込むことでより一層美味しくなります。
3-2. 炙り料理
振動型のIHクッキングヒーターは調理器具を振動させて熱を発生させますが、プレート自体は加熱されないため、炙り料理には不向きです。一方、ラジエントヒーターはプレートが直接加熱されるため、ガスコンロと同様に食材を直接炙ることが可能です。これは、お餅や野菜、魚介類など、表面を焼きつけることで風味を引き出したい炙り料理に適しています。
3-3. 遠赤外線を使いたい料理
ラジエントヒーターは遠赤外線を利用して調理を行います。
遠赤外線による加熱は、食材の内部から温めることができるため、お肉などの調理に向いています。遠赤外線で表面から発生した熱が内部に伝わりやすく、その結果、肉汁を内部に閉じ込めることができ、ジューシーで美味しい仕上がりになるのです。この方法は、肉の旨味と柔らかさを最大限に引き出したい場合にとくにおすすめです。
4. ラジエントヒーターを使う際の注意点
最後に、ラジエントヒーターを使う際の注意点についてお伝えします。以下の特徴は、IHクッキングヒーターに慣れている方にとってはとくに気をつけていただきたいところです。安全にお使いいただくためにも、以下のポイントを念頭においてくださいね。
4-1. やけどの危険がある
ラジエントヒーターの表面温度は非常に高くなるため、使用中や使用直後に触れると火傷をする可能性があります。特に調理終了後もプレートが長時間熱を保持するため、注意が必要です。調理中はくれぐれもヒーターから適切な距離に保ち、やけどに注意しましょう。
4-2. 周りの温度が高くなる
熱を発することなく調理できるIHクッキングヒーターと違い、熱を発するラジエントヒーターは当然周囲の温度にも影響します。コンロ周りの温度が高くなるため、うっかり触れないように注意してください。
4-3. 熱効率が悪い
IHクッキングヒーターと比較するとどうしても熱効率が悪く、調理時間が長くなってしまう傾向があります。調理時間が長くなると、電気代もかかりがち。家計の出費を控えめにしたいなら、日常的な使用は抑え、IHクッキングヒーターを活用した方が良いでしょう。
5. まとめ
本記事では、ラジエントヒーターについての特徴や、お使いになる上での注意点などをご紹介してきました。IHクッキングヒーターとは使い勝手も特徴も異なり、まさに似て非なるもの。ぜひお使いの際は、以上のことを踏まえて安全に利用してくださいね。