
健康やリラクゼーションを求める人の間でブームとなったサウナ。いまやその流れは「自宅で楽しむ家庭用サウナ」へと広がっています。コンパクトなドーム型から本格的なフィンランド式まで選択肢は多彩ですが、初めて検討する方にとっては「どれを選べばいいの?」「設置や費用は?」と悩みどころも。
そこで今回は、家庭用サウナを手がけるメーカーへの取材をもとに、生活シーン別のおすすめ製品と失敗しない選び方を徹底ガイド!安心して導入を検討できる一冊の企画記事としてお届けします。
1. 家庭用サウナが注目される理由

近年目覚ましい“サ活”ブーム。あなたの周りにも「サウナ部に入っている」「週1回以上サウナに通っている」という人がいるのでは?
今やサウナは「汗をかく場」から「心と体をリセットする体験」へと認識が変わり、テレビやSNSで広まった“ととのう”という言葉が象徴的に使われています。1960年代以降、日本では何度かサウナブームが起きてきましたが、ここ数年はSNSでの発信やメディアでの取り上げ、アフターコロナで高まった健康意識、“チル”を楽しむ若者文化との相性の良さから、再び脚光を浴びています。
そして今、その流れは施設から家庭へ。爆発的なブームを経て、「自宅で気軽に楽しみたい」というニーズが急増しているのです。
2. 家庭用サウナのメリット・デメリット

「自宅でととのう」という新しい贅沢を叶えてくれる家庭用サウナ。好きなときに汗を流し、心身をリフレッシュできるのは大きな魅力ですが、導入にはそれなりのコストや環境づくりが求められることも。以下で、事前にメリットとデメリットを整理しておきましょう。
2-1. メリット
好きな時間に入れる
なんといっても一番のメリットはこれ。施設と違い、混雑や順番待ちのストレスはゼロ。夜中に眠れないときや、朝の目覚まし代わりなど、自分のペースで楽しめます。
健康効果を日常化
血行促進や疲労回復、質の良い睡眠につながるとされる“サウナ効果”を毎日の生活に取り入れることができます。定期的に通う時間や交通費をかけなくても、健康習慣を維持できる点は大きなメリット。
プライベート空間
他人の視線を気にせず、リラックスした状態で汗を流せます。家族やパートナーと一緒に使えば“自宅の特別なリラクゼーション空間”に早変わり。小さなお子さんがいて外出が難しい家庭にも向いています。
外出時間の節約
わざわざ施設まで足を運ばなくても、自宅で“ととのう”ことが可能。仕事終わりに寄り道する時間や休日の移動時間が不要になるため、暮らしのリズムが格段にスムーズになります。空いた時間は自分の仕事や趣味に回せば、そのぶん生産性もアップ。
2-2. デメリット
初期費用が高い
家庭用サウナは決して安くありません。小型タイプで約50万円から、大型タイプでは300万円近くかかることもあります。長く使うことを前提に、「投資」として割り切れるかが判断ポイントです。
設置スペースの制約
庭や広い部屋を確保できなければ設置が難しい場合も。マンション向けのコンパクトタイプも登場していますが、家庭の間取りや配管事情によっては導入を断念せざるを得ないケースもあります。
ランニングコスト
電気ストーブ型なら電気代、薪ストーブ型なら薪代が発生します。使用頻度が高いと月に数千円規模になることも。光熱費を抑えたい人は注意が必要です。
メンテナンスの手間
サウナ室内は湿気がこもりやすく、掃除や換気を怠るとカビや劣化の原因になります。長く快適に使うには、日常的なメンテナンスを組み込む意識が欠かせません。
3. 【生活シーン別】おすすめの家庭用サウナ
家庭用サウナを選ぶときは、暮らしのスタイルや住環境に合うモデルを選ぶことが大切です。今回は、サウナ業界を牽引する株式会社トーホーの中島さんと株式会社メトスの明さんにヒアリングを行ない、戸建て・マンション・別荘といったシーン別におすすめのモデルを伺いました。
3-1. 戸建て・庭付きファミリー世帯に
トーホー「爽快 森のサウナ バレルサウナ」(2000タイプ)


「桧無垢のまるい樽型のサウナは見た目にも可愛くて、とても映えます。庭に置くだけで非日常の空間に早変わり。家族や友人と楽しいサウナライフを味わってください。」とのコメント通り、見た目のかわいらしさも魅力。完成品をトラックでそのまま配送・設置してもらえる安心感もあります。
目安金額:165万円〜(4人用)/熱源は電気・薪から選択可能
メトス「モリス」(MPS-6000ML/4〜5人用)

「ヒーターが露出していないサウナヒーターでロウリュが可能な商品は、本商品が国内唯一です。背もたれの専用ハッチからマイルドな蒸気がふりそそぎます。そのため、お子様からお年寄りまで安心してサウナ入浴できます。60℃から80℃の室内で、リラックスしながら心地よく発汗したい方におすすめする、足元から頭までじっくり温まるプライベートサウナです。」とのこと。寝転んでくつろげる広さもあり、家族でじっくり温まれるモデルです。
目安金額:297万円(税込本体)+工事費
3-2. マンションに住む共働き夫婦に
トーホー「爽快 森のラーメンサウナ(箱型DIYタイプ)」

ユニークな名前が興味を惹くこちらのサウナ。名前の由来は日本語で「枠、額縁」という意味をもつドイツ語の「Rahmen(ラーメン)」。縦の柱と横の梁を剛接合することで形成された門型構造を「ラーメン」と呼ぶのだそうです。
「パーツで搬入できるので、階上や狭小地でも設置がしやすいです。二人用の電気ストーブで、もちろんロウリュも可能です。」とのこと。DIY感覚で導入でき、まず試してみたい層にぴったり。
目安金額:50万円〜(キット品)
▶︎「爽快 森のラーメンサウナ(箱型DIYタイプ)」についてもっと詳しく
メトス「クリマ」(MPS-2700CL/2人用)


「コンパクトながら本格的なロウリュを楽しめるのが魅力。サウナストーンに直接水やアロマ水をかけてダイレクトなロウリュを楽しむ、まさにサウナの醍醐味を味わうことができます。」とのコメント。
サイズは1人用から4~5人用まで人数に合わせて選べるサイズ展開で、外装をそのまま生かすフリースタンディングタイプと、インテリアに合わせたビルドインタイプの施工が可能です。忙しい日々の中でも、自宅でリトリート体験を叶えられます。
目安金額:192万5千円(税込本体)+工事費
4. 家庭用サウナの導入にかかる費用とランニングコスト

家庭用サウナは「一生モノの買い物」といわれるほど長く使うもの。そのため、導入前には、初期費用とランニングコストの両面をしっかり理解しておきましょう。
4-1. 初期費用の目安
家庭用サウナの価格帯は、小型タイプで50万円前後から、大型タイプでは300万円近くになるケースもあります。商品や導入環境によって初期費用は異なりますが、以下のような目安額となるでしょう。
- コンパクトなDIY組立型:50万〜100万円程度
- 庭や別荘に置く中型タイプ:150万〜200万円程度
- 家族で使える本格仕様の大型タイプ:250万〜300万円前後
また、実際に設置するにあたり、本体価格のほかに工事費や輸送費もかかってきます。電源工事や基礎づくりが必要になる場合もあるため、本体価格に加えて数十万円ほど上乗せになることを想定しておくと安心です。
4-2. ランニングコストと維持の工夫
サウナは導入後の維持費もポイントになります。メンテナンスを怠ると劣化や故障につながり、結果的に修理費や買い替えで余計にコストがかかってしまうこともあるため注意が必要です。
電気ストーブ型
消費電力によりますが、1回の利用でかかる電気代は数百円程度。毎日のように使うと月数千円規模になるため、ライフスタイルに合わせて利用頻度を考えるのがおすすめです。
薪ストーブ型
薪代は地域や調達方法によって差がありますが、こちらも月数千円程度が目安。アウトドア好きの方なら薪割りや調達そのものを楽しみに変えるケースも多く、体験価値の一部として人気があります。
メンテナンス
サウナ内は高温多湿になるため、換気や清掃を怠ると劣化やカビの原因になりやすいのが難点。使用後は床やベンチを拭き取るだけでも耐久性が大きく変わります。とくに木材を使ったモデルは、日々の手入れが寿命を延ばすポイントに。
耐久性
国産ヒーターや桧材を使用した製品は頑丈で、20年以上使用している事例もあります。逆にメンテナンス性の低い製品やサポート体制の弱いメーカーを選ぶと、数年で交換が必要になることも。導入時には「どれくらいの期間、安心して使えるのか」も重視したいポイントです。
5. 失敗しない選び方とチェックポイント

家庭用サウナは高額で長く使う設備だからこそ、「買ってから後悔しない」ための視点が欠かせません。この章では再び、トーホーとメトスのご担当者から伺ったアドバイスをもとに、失敗を防ぐポイントを整理しました。
5-1. 情報をうのみにせず信頼性を確認する(トーホー)
近年はSNSやネット広告で「格安サウナ」が出回っていますが、入金後に納品されない、連絡が途絶えるといったトラブルも耳にします。
トーホーの中島さんは「値段だけで判断せず、会社の歴史や口コミをよく確認したうえで選んでください」とアドバイス。実際に現物を見たり、担当者と直接話をしたりすることが安心につながります。
5-2. 安全基準をクリアしているかチェックする(メトス)
家庭用サウナは高温・高電力を扱う設備のため、安全性の確保が重要です。メトスの明さんは「ヒーター単体ではなくユニットでPSE*を取得しているかどうかは大きな判断材料」と強調します。
「メトスプライベートサウナはユニット(サウナ室とサウナヒーター)でのPSEを取得し、電気用品安全法における特定電気用品の安全基準にも適合しています。また、電源をONにしてから3時間後に電源がOFFになるサウナヒーターの『切り忘れ防止タイマー機能』は安全面だけでなく、省エネにも配慮されています。」
製品を選ぶ際には、ユニットでPSEを取得しているか、そして万が一の高温異常時に作動する熱源遮断装置が備わっているかどうかが最低限チェックすべきポイントです。安全装置の有無を必ず確認してから選ぶようにチェックしましょう。
*PSE:Product Safety, Electrical Appliances & Materials の略称で、「電気用品安全法(電安法)」に基づく安全規格を示すマークです。
5-3. 維持しやすい構造かどうかを見る(メトス)
長く快適に使うには、メンテナンスのしやすさも重要なポイントです。清掃がしやすい床材や、省エネ設計のヒーターなど、「日々の使いやすさ」がランニングコストを抑えるカギになります。20年以上ノーメンテナンスで使い続けている例もあるそうです。
5-4. 導入前に体験してみる
両社が口を揃えるのが「現物を体験してから購入すること」。ショールームや展示会で実際に座り心地や広さ、温まり方を試すと、自宅に合うかどうかがイメージしやすくなります。
“家庭用サウナ”は一生に一度の大きなお買い物だからこそ、後悔しないためにも、ぜひ家族全員で実物を見学してから選んでくださいね。
6. 担当者が考える“サウナの魅力”は?

「自然の中で楽しむサウナと水風呂」(トーホー・中島さん)
「やはり自然の中で楽しむサウナと水風呂が気持ちいいですね」と中島さん。庭や別荘にサウナを置けば、桧の香りに包まれながら“ととのう”ひとときを楽しめます。外気浴と水風呂の組み合わせは想像以上に爽快で、家族や友人とサウナタイムをシェアすればリゾート気分を味わえるはずです。
「五感全てを使ってリラックスできるところ」(メトス・明さん)
「サウナの本場フィンランドでは60〜80℃の室温で、ロウリュにより体感温度を上げることで自然な発汗を楽しみます。熱を感じる肌感はもちろん、サウナストーンから発せられる蒸気の音に耳を澄ませ、お気に入りのアロマの香りで満たされる…五感すべてを使ってリラックスできるのがロウリュの魅力です」と明さん。ストーンに水をかけた瞬間のジュッという音や、ふわっと広がる蒸気の熱気は格別。お気に入りの香りを使えば、自宅にいながら本場フィンランドの雰囲気を堪能できます。
7. 家庭用サウナで自宅をもっと“ととのう”場所に
「自宅でととのう」という新しいライフスタイルを叶えてくれる家庭用サウナ。導入には初期費用や設置条件といったハードルもありますが、暮らしに合わせた製品を選び、正しい知識を持って維持していけば、長く快適に楽しむことができそうです。
今回お話を伺ったトーホーとメトスの担当者の言葉からも伝わるように、サウナの魅力は単なる入浴習慣を超えて、五感や自然と深くつながる豊かな体験にあるもの。施設に通うのとはひと味違う“おうちサウナ”ならではの価値を、ぜひご自身で試してみてはいかがでしょうか?
取材協力
株式会社トーホー
大正12年創業。東濃ひのきの産地・岐阜県白川町で木材の製材・加工・販売を行なう老舗企業。環境に配慮した循環型のものづくりを掲げ、建材から雑貨、そしてバレルサウナまで幅広く展開している。
株式会社メトス
1947年創業。商業用サウナのリーディングカンパニーとして全国の温浴施設やホテルに導入実績を持つ。フィンランド式サウナを日本に導入した草分け的存在で、家庭用サウナであっても商業用サウナと同等のスペックを持つ品質の高さが最大の魅力。家庭用サウナ「メトスプライベートサウナ」シリーズに搭載されているサウナヒーターはすべて自社開発の国産。