
玄関は「家の顔」ともいえる場所。お客様の第一印象を左右するだけでなく、毎日家族が出入りするたびに目にする空間でもあるからこそ、こだわりたいですよね。
そこで今回は、耐久性や掃除のしやすさといった機能性とデザイン性を兼ね備え、インテリアのテイストをぐっと引き立ててくれる「玄関タイル」を特集。国内タイルメーカー2社にご協力いただき、人気のインテリアスタイル別におすすめの玄関タイルをご紹介します。
1. 玄関タイルの基礎知識

玄関タイルは、デザイン性が高く、耐久性や掃除のしやすさでも評価の高い素材。夏場にはそのひんやりとした質感で、暮らしに涼感をプラスしてくれる存在にもなります。
一方で、目地の汚れやコスト面など注意したい点もありますが、実際に多いのは「デザイン選び」での後悔。色や質感が空間の雰囲気に合わず、「思っていた印象と違った」というケースです。色味やご自身の好みだけで選んでしまうと、実際に施工した際に「思ったより色が濃かった」「タイルが主張して他のインテリアと喧嘩してしまう」といったリスクも。
まずはご自身の目指すインテリアのイメージを具体的に定めておきましょう。
以下では、人気のインテリアスタイル別に2メーカーから寄せられたおすすめ玄関タイルをご紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。
2. インテリアテイスト別おすすめ玄関タイル
今回ご協力いただいたのは、スワンタイル営業部の西川さんと名古屋モザイク工業企画グループのK.Fさん。人気の6つのインテリアスタイルに合わせ、それぞれの雰囲気に調和するおすすめの玄関タイルを教えていただきました。
2-1. 自然素材の経年変化を味わう「ラスティックインテリア」

ラスティックスタイルは、木の節やラフな質感を活かした、素朴で温かみのある雰囲気が魅力。アンティーク調の家具やアイアン小物とも相性がよく、落ち着いた空間をつくりたい方に人気のスタイルです。
スワンタイルのおすすめ
リギル(RGI-●)
「木調デザインで屋内外問わず使えるシリーズ。表面はさらさらとした質感ながら、滑りにくい“さらっとグリップ”機能を備えているところもポイント。機能性とデザイン性を両立させた製品です。」(西川さん)

名古屋モザイク工業のおすすめ
オストゥーニ(CDS-O1870G)
「白い街並みの石畳を思わせるデザインで、縁には擦れや欠けなどヴィンテージ感のある加工を施しています。程よい色むらがあるので、明るい色合いでも汚れが目立ちにくく、玄関にも取り入れやすいですよ。」(K.Fさん)


ラスティックスタイルは重厚感が出やすい一方で、暗くなりすぎたり雑多に見えたりするのが悩みどころ。リギルのように木調を再現しながらも機能面で安心できるタイルや、オストゥーニのように明るい石畳風で軽やかさを出すタイルを選ぶと、ナチュラルさと上質感を両立しやすくなります。
2-2. 抜け感のある淡色空間「韓国風インテリア」

韓国風インテリアは、白やベージュ、パステルカラーをベースにしたやわらかなトーンが特徴。丸みのある家具や余白のある空間づくりで“抜け感”を演出し、SNS映えする雰囲気が人気を集めています。
スワンタイルのおすすめ
レジェロ(内床PM-300/N-●、PM-300/S-●)
「明るい色合いで室内を広く見せ、空間全体を明るく演出します。外床用は防汚機能“らくらくり~ん”で清潔感を保てます。」(西川さん)
焼きもの特有の色むらと色幅も、空間にニュアンスを演出するアクセントに。

名古屋モザイク工業のおすすめ
バイオフィリック(PST-X9830G)
「天然石や木材のエッセンスを取り入れ、自然とのつながりを感じさせるデザイン。シンプルすぎず、個性的な小物とも調和し、韓国風インテリアにもよく馴染みます。」(K.Fさん)


韓国風インテリアは、甘さが強くなりすぎたり汚れが目立ったりするのが悩み。レジェロのように明るくクリーンな印象を保てるタイルや、バイオフィリックのように自然素材のニュアンスを取り入れたタイルを合わせると、軽やかで飽きのこない空間に仕上がります。
2-3. 和の静けさと北欧のミニマルを融合「ジャパンディ」

ジャパンディは、和の落ち着きと北欧のシンプルさをかけ合わせたスタイル。自然素材や引き算の美学に基づいた空間づくりで、凛とした上質さを演出できます。時代に左右されにくく、落ち着いた暮らしを求める方に人気です。
スワンタイルのおすすめ
ヴェイル(PM-300/VE-●、PM-630/VE-●、PM-600/VE-●)
「空間に重厚感を与えつつ、上質感を演出できます。さらに防汚機能“らくらくり~ん”で清潔感を保ちやすいのも特徴です。」(西川さん)
空間に重厚感を与えてくれるパキッとした陰影が、ジャパンディの“侘び寂び”にマッチするはず。

名古屋モザイク工業のおすすめ
カバラストン(AON-U5740G)
「重厚な珪石をモチーフに、豊かな凹凸を再現したシリーズ。やわらかな色合いで木材や植栽とも美しく調和し、ジャパンディのコンセプトに寄り添います。また、庭先では置き石風のアレンジも可能です。」(K.Fさん)


ジャパンディは、落ち着きが魅力な一方で、寒々しく見えたり色選びに迷いやすいスタイル。ヴェイルのように上質さを感じさせつつ清潔感を維持できるタイルや、カバラストンのように自然素材と調和するタイルを選ぶと、静けさの中に温かみを取り入れた玄関空間が実現します。
2-4. 明るくナチュラルな空間づくりに「北欧スタイル」

北欧スタイルは、白や淡いトーンを基調に、木目の家具や柔らかなファブリックを合わせたシンプルで温かみのある空間づくりが特徴。自然光を活かした設計と相まって、清潔感があり誰でも取り入れやすい王道のスタイルです。
スワンタイルのおすすめ
フローレン(PM-300/FLR-●、PM-630/FLR-●)
「柔らかく温かみのある色合いが特徴で、防汚機能“らくらくり~ん”によって清潔感を保ちやすいタイルです。」(西川さん)
ウォームトーンを感じさせるカラーは、北欧スタイルのビビッドな色使いや柔らかい木目家具にもマッチします。

名古屋モザイク工業のおすすめ
ノール(OR-X3540)
「北イタリアの天然石“Ceppo di Gre(チェッポ・ディ・グレ)”を再現したデザイン。ナチュラルで明るい印象をもたらすテラゾー調で、玄関から駐車場まで統一感を持たせやすい点も魅力です。」(K.Fさん)


北欧スタイルはシンプルで無個性になりやすいのが難点。フローレンのようにやさしい色合いで清潔感をプラスしたり、ノールのように個性ある石調デザインを取り入れたりすることで、空間全体がナチュラルかつ印象的に仕上がります。
2-5. 無骨さと都会的な雰囲気を演出する「インダストリアルスタイル」

インダストリアルスタイルは、鉄やコンクリート、古材などの“無骨な素材”を活かしたスタイル。シンプルでありながら力強さがあり、都会的な雰囲気を演出できます。ヴィンテージ家具やアイアン素材とも相性がよく、男性からの人気も高い傾向があります。
スワンタイルのおすすめ
モーリス(PM-300/MAU-●)
「土ものの自然な風合いや質感を追求したタイルです。防汚機能“らくらくり~ん”で清潔感も保ちやすく、見た目の無骨さと日常使いの安心感を両立できます。」(西川さん)
ラスティックなブラウン系のご用意もあり、カラーごとの表情は多彩。じっくり見比べながら選びたい逸品です。

名古屋モザイク工業のおすすめ
コットメント(PS-U4540G)
「コンクリート特有の色むらまで再現した、ミニマルなイメージのセメント調のタイルです。クセがなく空間に自然に溶け込むため、インダストリアルな雰囲気をつくりやすいと人気です。」(K.Fさん)


インダストリアルスタイルは、無機質になりすぎて冷たい印象になってしまうことも。モーリスのように自然美を感じさせる質感を取り入れたり、コットメントのようにシンプルで使いやすいセメント調を選んだりすると、武骨さの中に洗練さを加えることができます。
2-6. レトロとモダンが融合する「ミッドセンチュリースタイル」

ミッドセンチュリースタイルは、1940〜60年代に生まれたデザイン様式。ウォールナット素材の家具やビビッドなアクセントカラー、曲線的なフォルムを取り入れ、懐かしさと新しさが同居する空間をつくり出します。遊び心がありながら上質さも感じられるのが特徴です。
スワンタイルのおすすめ
プリモス(PM-150/S-●、PM-300/S-●)
「柔らかな面状と温かみのある色合いが独特の雰囲気を生み出します。防汚機能“らくらくり~ん”で清潔感を保ちやすく、デザイン性と日常使いを両立できます。」(西川さん)
あたたかな色調のタイルが、一層カラフルなミッドセンチュリースタイルの空間の玄関口としてやさしく出迎えてくれます。

名古屋モザイク工業のおすすめ
ピエトラプーラ(BLS-X8620G)
「大理石の繊細な筋模様と石灰岩の結晶感をブレンドした、洗練された石模様のタイルです。ビビッドカラーや個性的な家具と合わせることで、ミッドセンチュリーらしい世界観を引き立てます。」(K.Fさん)


ミッドセンチュリースタイルは、色や形の組み合わせ次第で雑多に見えてしまうことも。プリモスのように空間に温かみを与えるタイルや、ピエトラプーラのように洗練された石調を合わせることで、遊び心と上質感をバランスよく取り入れられます。
3. メーカーが語るタイルの最新トレンド

「デザイン性」と「機能性」の両立がますます進む、近年のタイル市場。変化が目まぐるしい市場の中で、スワンタイルが注目するのは大判化や立体加工。
一枚で空間をぐっと広く見せる大判タイルや、表面に陰影をつける立体的なデザインは、玄関をダイナミックに演出します。また、リサイクル素材を取り入れる取り組みも進み、近年は環境に配慮した製品づくりが広がっているそう。
一方で、名古屋モザイク工業が挙げるのはデジタルプリント技術の進化。天然石や木材、ファブリックなど異素材の質感をリアルに再現できるようになり、これまで難しかった“本物ならではの奥行き感”まで表現可能になったのだとか。さらに、触れるとわかる凹凸や立体的な表面加工が加わり、見た目だけでなく「手触り」までもデザインの一部になっています。
また、業界全体ではカラーの傾向にも変化が。
ここ数年人気だったクールなグレー系から、温かみのあるベージュや土の色合いへとシフト。ハンドメイド感や自然素材の風合いを持つタイルも注目を集めており、住まいにやさしい表情を与える存在として選ばれる傾向が強まっています。
トレンドを取り入れ、モダンな印象にアップデートしていくもよし、好きなインテリアテイストに合わせ、敢えてタイムレスな定番アイテムで統一するもよし。製品ごとのニュアンスによって大きく印象が変わる玄関タイルは、遊び方も無限大と言えそう。
4. 初心者向けタイル選びチェックリスト

タイルは種類やデザインが豊富な分、選び方を間違えると「思っていた仕上がりと違った」と後悔することも。そこで、初心者の方が失敗しにくくなるチェックポイントをまとめました。
使用場所を確認する
屋内・屋外・浴室など、タイルにはそれぞれ適した用途区分があります。商品ページやカタログに「屋外床◎/居室床×」といった表記があるので、必ず確認して選びましょう。
サイズ感と目地込みでの実寸をチェック
施工後の印象は、目地幅も含めて大きく変わります。仕上がりを想像するときは、タイル単体ではなく「目地込みのサイズ」でイメージするのがポイントです。
写真と現物の差を見極める
カタログや画面越しでは、色味や質感が正確に伝わらないことも。気になる商品は必ずサンプルを取り寄せたり、ショールームで現物を確認したりするのがおすすめです。
価格は㎡単価で計算
見た目の価格だけでなく、㎡単位の単価で試算しておくと安心。施工費用を含めて全体コストをイメージしておきましょう。
さらに、名古屋モザイク工業では初心者向け冊子『TILE SELECT 初めてのタイル選びハンドブック』を配布中なのだそう。ショールームで手に取ることができ、タイルの基礎知識から選び方のポイントまで分かりやすく解説されています。初めてタイルを検討する方にとって心強い参考資料なので、ぜひ併せてチェックしてみてくださいね。
5. 玄関タイルを選ぶポイントは、デザイン性と機能性のバランス
玄関タイルを選ぶときは、今回ご紹介したように人気のインテリアスタイルごとにおすすめの製品を知っておくと、理想の空間づくりがぐっと具体的にイメージしやすくなります。
あわせて大切なのが、デザイン性と機能性のバランス。見た目だけで決めてしまうと「汚れが目立つ」「雰囲気が合わない」といった後悔につながることもあるため、失敗例やメーカー担当者のアドバイスを参考にすると安心です。
ぜひこの記事を参考に、ご自宅の雰囲気や暮らしに合った一枚を選び、「家の顔」である玄関を心地よい空間に仕上げてみてください。
取材協力
スワンタイル株式会社
スワンタイルを展開する日東製陶所は、もともと陶磁器用絵具の製造からスタートし、昭和34年に陶磁器施釉モザイクタイルの生産を開始。長年培った技術力をもとに釉薬から製品まで自社一貫体制で製造を行ない、高品質なタイルづくりを続けています。
名古屋モザイク工業株式会社
昭和13年創業。タイルの商品開発・販売を手がけ、全国にショールームを展開する業界のリーディングカンパニー。デザイン性の高い商品群と、ユーザーに寄り添った提案力で国内外から高い評価を得ています。