
家の屋根のデザインを考えるとき、見逃せない選択肢の一つが寄棟屋根。日本だけでなく、世界中で広く採用されている屋根デザインですが、具体的にどういった構造で、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
本記事では、寄棟屋根について詳しく解説するとともに、切妻屋根との違いについても触れ、家づくりに役立つ情報をお届けします。
1. 寄棟屋根とは一体なに?
寄棟屋根は「よせむねやね」と読み、日本だけでなく世界中の住宅で採用されている一般的な屋根の形状のこと。
この種類の屋根を持つ建物は「寄棟造(よせむねづくり)」と呼ばれ、英語では「hipped roof」と表現されます。「hipped」は「隅棟のある」という意味で、「隅棟」とは隣接する屋根のつなぎ目が山折状になっている部分のことを指します。
2. 寄棟屋根の構造

寄棟屋根の構造は、頂上から軒先に向かって4方向に屋根の面を持つ形状です。
一番頂上部にある棟を大棟、傾斜のある棟は隅棟もしくは下り棟と呼びます。真上から見ると長方形になっており、長い面には台形、短い面には三角形の屋根が取り付けられています。この特徴的なデザインが、寄棟屋根のモダンでおしゃれな印象を強めます。
3. 寄棟屋根のメリット

それでは、寄棟屋根にはいったいどのようなメリットがあるのでしょうか?以下でご紹介していきます。
3-1. 建物の向きを限定しない
寄棟屋根は四方向に均等に屋根が伸びているため、どの方向から見てもバランスの取れた外観を持ちます。これによって正面や側面といった建物の向きを限定しなくなるため、狭小地や変形地であっても家を建てやすいでしょう。
3-2. デザインに汎用性がある
寄棟屋根は伝統的な和風建築から、現代的なモダンデザインまで、様々な建築スタイルにマッチします。この汎用性の高さは、リフォームや新築の際にデザインの自由度を広げてくれます。とくに平屋には、モダンな印象を高めるために寄棟屋根が採用されることが多くあります。
3-3. 高さ制限のある土地でも採用しやすい
寄棟屋根は、建物全体の高さを抑えやすいため、高さ制限のある土地でも採用しやすいです。特に都市部では建築基準法による高さ制限が厳しく、寄棟屋根の形状が有効です。屋根の勾配を工夫することで、内部の居住スペースを確保しつつ、外観をすっきりと見せることができます。
3-4. 耐久性が高い
寄棟屋根は構造的に非常に安定しており、風や地震に対する耐久性が高いです。全方向に傾斜があるため、風圧を分散しやすく、耐風性に優れています。また、屋根全体が一体となっているため、地震による揺れを効率よく分散させることができます。これにより、長期にわたって安心して住むことができるでしょう。
3-5. 耐風性が高い
全方向に傾斜がある寄棟屋根は、風を効果的に逃がすことができ、強風時にも安定した構造を保ちます。とくに台風や強風の多い地域では、この耐風性の高さが大きなメリットと言えるでしょう。また、風による被害を最小限に抑えることで、メンテナンスの頻度やコストを抑えることもでき、長い目で見たときに経済的なメリットが大きいでしょう。
4. 寄棟屋根のデメリット

世界中の住宅で採用されている屋根だけに、メリットがたくさんありました。しかし一方のデメリットはどうでしょうか?以下で寄棟屋根のデメリットを挙げていきます。
4-1. コストが高い
4面を持つ寄棟屋根は、切妻屋根などの他の屋根に比べて構造が複雑なため、材料費や工賃といった施工コストがどうしても高くなりがち。長期的なコストパフォーマンスを鑑みて、慎重に選択しましょう。
4-2. 屋根裏のスペースを確保しにくい
寄棟屋根は傾斜が四方向に広がるため、屋根裏のスペースが狭くなりがちです。このため、屋根裏を収納スペースや居住空間として利用する場合には工夫が必要です。また、換気や断熱対策をしっかり行なわないと、夏場の暑さや冬場の寒さが直接影響することになります。
4-3. 雨漏りのリスクがある
寄棟屋根は多くの接合部分を持つため、雨漏りのリスクが高まります。とくに隅棟や谷部分は水が集まりやすく、漏水の原因となることがあります。定期的なメンテナンスや適切な施工が必要となる点は留意しておきましょう。
4-4. ソーラーパネルの設置に不向き
自宅に太陽パネルを設置したいと考えている人は、寄棟屋根は避けた方が無難です。なぜかというと、屋根が四方向に傾斜しているため、ソーラーパネルの設置が難しく、効率も低下しがちだからです。
とくに、切妻屋根のように片面が広く取れる屋根と違い、最適な角度でパネルを設置することが難しくなるため、発電効率に影響が出る可能性があります。
ソーラーパネルの設置を検討する場合は、一度リフォームの専門業者に相談してみることをおすすめします。
5. 切妻屋根とどう違う?

よく寄棟屋根と比較される「切妻屋根」ですが、見分け方は簡単。
切妻屋根は、二方向に傾斜がある屋根の形状です。古代では真屋と称され、寄棟屋根よりも格が上とされていたのだとか。
特徴として、寄棟屋根に比べて施工が簡単でコストも抑えられる点が挙げられます。また、接合部分が寄棟屋根に比べて少ないため、雨漏りの心配が少ないこともポイント。
このように他の屋根デザインもそれぞれに特徴やメリットがあるため、ぜひご自宅に合う屋根選びを行なってみてください。
6. まとめ
本記事では寄棟屋根の基礎的な知識をお伝えしてきました。世界中の住宅で採用されているだけにメリットがたくさんありましたが、肝心なのはご自分の住宅に適しているかどうかです。立地や環境など、さまざまな観点から寄棟屋根の設置を検討してみてくださいね。
もしお困りの際にはぜひ【おうちのアラート】までご相談ください。住環境のプロが丁寧に対応させていただきます。