
一戸建てに付属する設備としてたまに見かける「浄化槽」。浄化槽とは一体なに?という方に、あるいは管理や設置をしようと考えている方に、本記事では浄化槽の種類や設置費用、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
1. 浄化槽とは一体何か

浄化槽とは、トイレから出る排水、台所やお風呂などの生活排水などの「汚水」を微生物を活用して処理してくれる設備です。ひと口に浄化槽と言ってもさまざまな種類があり、仕組みが異なります。
以下では、その中でも浄化槽全般に共通する工程を次章で紹介します。
2. 浄化槽の仕組み

それでは一体、浄化槽はどのような仕組みで汚水を処理しているのでしょうか。
すこし分かりにくいと感じる内容かもしれませんが、汚水が浄化槽に入る流れとともになるべく分かりやすく説明していきます。
①嫌気槽
汚水がまず嫌気槽と呼ばれる部屋に入ると、ここで空気を嫌う微生物が汚水中の有機物を食べて分解します。
②好気槽
次に好気槽と呼ばれる部屋に汚水が入ります。好気槽にはブロワーという装置によって酸素が送り届けられています。ここで汚水の分解を行なう微生物が酸素がないと生きられないためです。分解が行なわれたら次のステップへ移ります。
③無機化
有機物が二酸化炭素に変換される「無機化」が進みます。このとき汚水を浄化した微生物の塊は汚泥として沈殿分離されます。
④消毒
最後に塩素剤で消毒してから、側溝や道路、排水管、河川に放流されます。
3. 浄化槽の種類

それでは浄化槽の種類は一体どんなものがあるでしょうか?
後述しますが、水質汚染の問題から浄化槽にまつわる法改正があった影響で、現在は2番目に紹介する「合併処理浄化槽」の利用がほとんどです。以下で詳しく解説していきましょう。
3-1. 単独処理浄化槽
単独処理浄化槽は、トイレの排水のみを処理する浄化槽です。他の生活排水(台所や風呂など)は浄化されることなく河川などに流れ込んでいるため、環境保全の観点から平成12年に浄化槽法が改正されました。よって、平成13年4月1日以降は単独浄化槽の新設はできなくなり、合併処理浄化槽を設置することが義務付けられています。
また、現在単独処理浄化槽を使用している方も、交換の際には合併処理浄化槽へ変更しなければいけません。
3-2. 合併処理浄化槽(合併浄化槽)
合併処理浄化槽は、トイレを含む全ての生活排水を一括で処理します。処理浄化槽より効率的なタイプで、法の改正によって、現在多くの家庭で採用されています。下水処理場の二次処理と同程度の性能を持っているため、水質汚染の問題を解消できます。
4. 浄化槽を設置するメリット・デメリット

浄化槽の仕組みや種類を見てきたところで、次はメリットとデメリットを見比べてみましょう。
4-1. メリット
①災害時の使用
浄化槽の最大のメリットは、災害時にも使用可能な点です。下水道が被災しても、浄化槽は独立して機能します。
例えば、地震や台風などの災害時に下水道が壊れると、復旧までに数ヶ月かかることもありますが、浄化槽があればその影響を受けずに済みます。
また、適切に処理された浄化槽内の排水は、緊急時の水として使用することもできます。災害の多い日本では、この点は大きな強みとなります。
②水道代の節約
浄化槽を設置することで、水道代の節約が期待できます。下水道を利用する場合、上水道料金に加えて下水道料金も発生しますが、浄化槽を使用すると、上水道料金のみで済みます。これは、上水道の使用料がそのまま汚水排出量とみなされるためです。
しかし浄化槽は浄化槽で維持管理費がかかるため、どちらがお得かは計算してみないと分かりません。
4-2. デメリット
①停電時の影響
浄化槽のデメリットの一つは、停電時に使えなくなる可能性があることです。
浄化槽の汚水処理には電力を使う機関「ブロワー」が必要ですが、この原動力は電力。つまり停電が発生すると、ブロワーが停止し、浄化槽の機能が低下してしまいます。短期間の停電であれば問題ありませんが、長期化すると汚水処理に影響が出る可能性があります。電力が数日以上停止すると、空気を必要とする微生物の活動が低下し、浄化能力が衰えることを覚えておきましょう。
②維持管理費
浄化槽のもう一つのデメリットは、定期的なメンテナンスと維持管理が必要なことです。浄化槽の維持には定期的な点検や清掃が欠かせません。
また、浄化槽本体やブロワーなどの機器には耐用年数があります。一般的に浄化槽本体の耐用年数は約20〜30年、ブロワーは約5〜10年ほど。これらが故障した場合、当然修理や交換費用が発生するので、維持管理費を含めて総合的にコストを検討する必要があります。
③設置費用
浄化槽の設置には多大な初期費用がかかります。浄化槽本体や設置工事、配管工事などです。具体的な費用については次章で詳しく説明しますが、財政状況によってはこの初期投資がデメリットとなることも。
これらのメリット・デメリットを考慮し、自分のライフスタイルや地域の状況に合った選択をすることが重要です。
5. 浄化槽の設置・撤去費用

浄化槽の種類や設置場所により異なりますが、浄化槽の設置・撤去費用は一般的に以下の通りです。日数はおよそ3〜7日程度見込んでおいた方が良いでしょう。
また、その間はトイレが使えません。仮設トイレを用意するか、近所で使えるトイレのあてを探しておくことをおすすめします。
- 5人槽の場合:80万円〜100万円ほど
- 7人槽の場合:100万円〜130万円ほど
- 10人槽の場合:120万円〜130万円ほど
6. 浄化槽の維持費用

浄化槽にかかるお金は、工事費用だけではありません。設置したらその後は維持費用もかかってきます。トータルすると年間約7万円ほど。こうしたコストも頭に入れ、導入を検討してみてください。
6-1. 清掃料
まずは浄化槽内の沈殿物を除去し、清掃するための清掃費用です。清掃目安としては、半年に一回程度。
費用は汲み取りの量や業者、地域によって異なりますが、目安として3万円ほどかかります。
6-2. 保守点検料
浄化槽を点検し、必要に応じてメンテナンスを行なうための費用です。浄化槽の大きさや処理方式によって保守点検の回数は異なりますが、一般的には年に3〜4回程度の目安で行われます。
費用は年間で約1万5,000円が目安です。
6-3. 法定検査料
法定検査は、浄化槽法で定められた水質検査のこと。年に1回必ず実施する必要があります。
検査費用は自治体ごとに異なりますが、目安として約5千円程度です。
6-4. ブロアー電気料
ブロアー(エアーポンプ)は、微生物の繁殖に必要な空気を送り込む装置です。ブロアーが停止すると浄化に必要な酸素を供給できなくなり、微生物が死んでしまうため、基本的に常時運転しています。
ブロアーの電気代は年間で約2万円です。
7. 浄化槽の設置・交換のポイント3つ

さらに以下では浄化槽の設置・交換に関して押さえておきたいことをまとめました。時間が必要となるものも多いため、スケジュールに余裕を持って動くことをおすすめします。
7-1. 新規の設置や変更は届け出が必要
浄化槽を新たに設置する場合や変更する場合には、工事着工のおよそ3週間前までに「浄化槽設置届出書」という市町村への届け出が必要となります。設置許可が必要な場合もあるので、余裕を持って事前にお住まいの自治体に確認しましょう。
また、住宅の新築に併せて浄化槽を設置する場合には、建築確認の手続きも加わってきます。自治体に詳しい状況を説明した上、指示を仰いでください。
7-2. 浄化槽の変更も届け出が必要
浄化槽は、浄化槽法によって設置できる浄化槽の基準があらかじめ定められています。そのため、世帯数の増加や減築・増築などで浄化槽の規模や構造を変更したい際にも、変更届が必要となります。また、浄化槽の管理者を変更する場合にも同様に届け出が必要となります。
基本的に、浄化槽に手を加えるときは届け出を行う認識でいれば間違いありませんが、判断に迷ったら自治体に連絡して直接問い合わせるのも良案です。
7-3. 浄化槽の設置は補助金が利用できる場合も
浄化槽の設置には、国や自治体からの補助金が利用できる場合があります。高額な出費となるために、補助金の申請方法や条件を事前に確認し、有効に活用することをおすすめします。
8. まとめ
本記事では浄化槽の費用や仕組み、メリット・デメリットについてご紹介してきました。意外とコストがかかるかもと思われた方も多いのでは?
費用面だけでなく、全体的なメリットやデメリットからご自分の暮らしの最適解が見つかると良いですね!もしお困りごとがあれば、いつでも【おうちのアラート】までご相談ください。