日常生活ではあまり耳にすることのないであろう、「在来工法の浴室」という言葉。実はこちら、昭和から平成初期にかけての世代に生まれ育った人にとってはお馴染みの、タイル張りのお風呂のことなんです。システムバスが主流になった今、「在来工法の浴室」をリフォームしたいと考えている人は少なくないのでは?
そこで本記事では「在来工法の浴室」の定義とシステムバスの違いや、システムバスへリフォームするメリット、さらにはリフォームに際して気になる費用や工事日数などを徹底解説します。また、浴室のリフォームで使える保険や補助金についても紹介します。浴室のリフォームを検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。
1.「在来工法の浴室」とは
「在来工法の浴室」とは、日本の木造戸建において一般的な工法のひとつです。
他の部屋と同様に鉄筋コンクリートの基礎の上に柱や梁などで浴室スペースを作り、防水加工を施したもののこと。素材には木や漆喰、タイルなどを使用しています。
最近は新しい技術の進化とともに、システムバスなどの先進的な浴室が増え、在来工法の浴室はあまり見かけなくなってきました。在来工法の浴室には特有の趣がありますが、やはり暖かく冬場でも入浴しやすいシステムバスへのリフォームを希望する人の方が一般的に多い傾向にあると言えるでしょう。
2.「在来工法の浴室」とシステムバスの違い
それでは、昔ながらの在来工法の浴室と近年主流のシステムバスの違いは具体的にどんなところにあるのでしょうか。以下でその違いをご紹介していきます。
2-1.素材と構造の違い
在来工法の浴室は、木や漆喰、タイルなど自然素材を主体にした構造が特徴です。これにより、温もりや和風の趣が感じられます。また、在来工法の浴室は「円形の浴槽」や「ヒノキ風呂」など自由に素材や形などのデザインが決められる点も大きな特徴でしょう。
一方、システムバスは耐久性や耐水性に優れた合成素材で作られており、浴槽やシャワーなどがあらかじめセットで製造しているため、デザインの自由があまり効きません。ただ、モダンなデザインが多いため、近代的な雰囲気で浴室を統一したい方にとってはメリットのひとつでしょう。
2-2.利便性と機能の進化
在来工法の浴室と比較して、システムバスは優れた気密性と保温性を備えています。これにより、在来工法の浴室で感じることのある寒さや湯冷めの問題が軽減され、寒冷地域でも快適に入浴できます。
さらに、システムバスは自動給湯やマッサージ機能など、先進的で快適な機能が豊富に搭載されているため、入浴の快適性をより感じやすいと言えるでしょう。
2-3.メンテナンスと耐久性の観点
在来工法の浴室は素材によりメンテナンスが異なりますが、多くの場合タイルの目地に汚れがつまりやすく、掃除するのが大変です。一方でシステムバスは合成素材が多く使われ、清掃やメンテナンスが比較的簡単です。
3.在来工法のバスからシステムバスに変更するメリット
以上でご紹介した通り、在来工法の浴室とシステムバスにはさまざまな違いがあります。それでは、システムバスへ変更することでどんなメリットがあるのでしょうか。わかりやすく以下にまとめました。
3-1.温度差による体への負担が低減できる
在来工法の浴室では機密性が低いため、とくに冬場などは気温の変化による「ヒートショック」のリスクがありました。その点、システムバスは断熱性が高く、床材もヒヤリとしない素材のものを使うことができるため、ヒートショックのリスクが低減できます。これは、ヒートショックが起こりやすいと言われるお年寄りや特定疾患のある方にとっても、大きなメリットとなります。
3-2.モダンなデザインとテクノロジーを楽しめる
システムバスはシャワーや浴槽が一体化されたスマートなデザインが一般的であり、モダンで洗練されたバスルームを実現できます。これによって、システムバスのテクノロジーとデザインを掛け合わせた入浴時間が楽しめます。
3-3.省エネ効果が見込める
システムバスには先進的な断熱材や省エネ機能が組み込まれているため、エネルギーを効率的に使うことができます。在来工法の浴室で湯冷めするたびに追い焚きしていた場合、システムバスに変更することで結果的なランニングコストの削減が可能になります。
3-4.メンテナンスが簡単
システムバスは在来工法の浴室と比較して合成素材が多く使われているため、お手入れが簡単で清潔感を保ちやすくなります。これによって毎日の掃除の負担が減り、結果的にQOLの向上に繋げられるでしょう。
4.リフォーム時の気になるポイント
システムバスに変更する際には、様々な要素を考慮する必要があります。以下は、その変更時に気になる主なポイントです。
4-1.費用相場
システムバスへのリフォームには様々な要因によって費用が影響されます。バスルームの広さやデザイン、使用する素材などによって費用相場が異なりますが、大体80〜150万円程度となるでしょう。リフォームの際には、予算を明確にし、見積もりを複数取ることが重要です。手間はかかりますが複数の業者に相談することで、納得のいく金額に近づけられるハズです。
4-2.工事日数目安
システムバスへの変更に伴う工事期間は、大体3日から1週間程度と言われています。リフォーム中は一時的にバスルームを使用できないことがありますので、工事日数の目安を確認し、生活スケジュールに合わせて計画を立てることが必要です。また、工事が長引く場合に備えて、代替の入浴場所やトイレの確保も考慮すると良いでしょう。
4-3.その他のチェックポイント
追加工事が発生することも
工事が始まってから、床下の腐食やシロアリ被害といった予想外の問題や改善点が見つかる場合があります。補修工事が必要になれば、工事費用の追加や工事期間の延長などが見込まれます。もし在来工法の浴室を長くお使いの場合には、そうした可能性に備えて予算を多めに見積もっておくと心の負担が少ないでしょう。また、業者選びの際には、このような可能性をあらかじめ説明してくれる業者を選ぶ方が安心して工事を任せられるため、おすすめです。
補助金が利用できる場合も
浴室リフォームにあたって、補助金や助成金制度が利用できる可能性があります。現在、浴室リフォームで利用できそうな補助金は「介護保険」、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」、自治体の補助金・支援金などです。
次章以降では、主要な補助金・助成金をご紹介していきます。なお、自治体の補助金・支援金については、お住まいの地域の自治体によって千差万別のため、自治体に直接問い合わせた方が良いでしょう。
5.介護保険を使ったリフォーム
介護保険制度は、社会全体で介護を支えることを目的とした制度であり、その対象者は要支援・要介護認定されている方です。浴室をリフォームする際には、「介護保険を使った住宅改修」という名目で申請を行います。以下がその流れです。
5-1.条件
利用者が要支援・要介護認定を受けており、改修対象となる住宅に住んでいることが条件です。
5-2.補助金額と支払い方法
補助金額は利用者の所得(介護保険自己負担割)に応じて変動します。通常、介護保険を利用した住宅改修では、工事費用の一部が支給される形となります。以下は補助金に関する詳細です。
・補助金額
利用者の所得により変動します。一般的には、7~9割が支給されます。
・工事費の上限
補助金の支給には工事費用の上限が設定されています。通常は20万円が上限とされ、その範囲内で7~9割が支給されることになります。
・支給手続き
補助金の支給は償還払いとなります。工事が完了して全額が支払われた後、利用者が自治体に補助金の支給を申請し、審査が通れば返金が行われます。
ただし、上限の20万円を使い切った場合であっても、要介護状態区分が3段階以上上がった場合や転居した場合などは、再度申請することが可能となります。
5-3.申請からリフォームの流れ
・ケアマネージャーへ相談
まず、要支援・要介護認定を受けている方は、担当のケアマネージャーに相談します。ケアマネージャーは利用者の状態を確認し、介護保険を利用した住宅改修が適切かどうかを評価します。
・提案書の作成
ケアマネージャーが改修が必要であると認めた場合、住宅改修の提案書を作成します。提案書には改修の必要性や内容が詳細に記載され、これが申請の根拠となります。
・自治体への申請
提案書が作成されたら、それをもとに利用者や家族が自治体に申請を行います。自治体は提案書を元に審査を行い、介護保険を利用した住宅改修の支給の可否を判断します。
・補助金の支給
審査が通れば、補助金の支給手続きが行われます。補助金は償還払いとして、工事完了後に全額を支払った後で返金が行われる仕組みです。工事後の申請のために領収書が必要となるため、工事を依頼する業者から必ずもらっておくようにしましょう。
・工事の実施
補助金の支給可否が確定したら、工事が実施されます。工事は、安全性や利便性の向上を図るためのものであり、ケアマネージャーの指導のもとで進められます。
このように、介護保険を利用した住宅改修は、利用者の状態を確認し、提案書を通じて自治体への申請を経て、補助金の支給と工事の実施という手順を踏んでいます。
6.「長期優良住宅化リフォーム推進事業」を使ったリフォーム
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、日本政府が住宅の省エネルギー性能向上や耐震性向上を図るために実施している補助事業の一環です。浴室リフォームがそれに該当する対策を含んでいれば、補助金が支給される可能性があります。以下に対象者や補助金額、申請の流れなどについて説明します。
6-1.条件
省エネルギー性向上や耐震性向上などの性能向上リフォームを行う住宅が対象です。ちなみに、この制度は浴室のみのリフォームに使うことはできず、住宅全体をリフォームする際に認可が降りる助成金となっています。
6-2.補助金額と支払い方法
補助金額と支払い方法については、対象者の所得やリフォーム内容により異なります。一般的な情報を以下にまとめます。
・補助金額
補助金額は、リフォームにかかる費用や改善内容に基づいて計算されます。省エネルギー性向上や耐震性向上のためのリフォームが積極的に支援されます。
・補助金額の上限
具体的な補助金額は、最大200万円です。
・支給手続き
補助金の支給は通常「償還払い」となります。つまり、リフォームが完了して全額が支払われた後、利用者が国に補助金の支給を申請し、審査が通れば返金が行われます。
返金の際は、一旦は工事費用を全額工事業者へ支払わなければなりませんので、注意が必要です。
6-3.申請からリフォームの流れ
「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金を得るための申請手続きは以下の通りです。
・対象事業の確認
まず、実施主体が実施している「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が対象となっているか確認します。
・申請書類の用意
申請手続きはリフォーム工事の施工担当者が行います。リフォームの概要、見積書、計画図、施工者の情報など必要な書類や情報を提出します。
・申請
用意した書類をもとに、指定された方法で申請を行います。申請は通常、自治体や実施主体に提出することになります。
・審査
申請が受理されたら、審査が行われます。リフォーム事業が対象となる条件を満たしているかどうかが審査の対象となります。
・補助金の支給
審査が通れば、補助金の支給手続きが行われます。支給のタイミングや方法は事業の実施主体により異なります。
介護保険でリフォームを行なった場合と同じく、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の場合も償還払いとなります。ただし補助金は施工業者が一度受領することを念頭に入れておきましょう。発注者はリフォーム代金を全額支払った後に施工業者から補助金を受領するか、補助金分が差し引かれたリフォーム代金を支払うことになります。
7.まとめ
本記事では在来工法の浴室の特徴やシステムバスとの違い、さらにはシステムバスへのリフォームのメリットや手順を解説しました。システムバスへのリフォームを希望されている方の中には、補助金・助成金制度の利用対象となる方もいるかもしれません。予算を抑えたい場合には、業者に相見積もりを取るとともに、利用できる補助金・助成金についても事前によくリサーチしましょう。家族で相談しながら、納得のいく“次世代の浴室”を作ってみてくださいね。
お悩みの際にはぜひ【おうちのアラート】までご相談ください。