
多くのドア上部についている「ドアクローザー」。一体何のために付いているのか不思議に思ったことはないでしょうか。また、ドアクローザーから異音がするなどのトラブルで、初めて存在に注目した方もいるかもしれません。
この記事では「ドアクローザー」の基本的な機能から種類、トラブルの原因と対処法をご紹介していきます。
1. ドアクローザーとは

ドアクローザーとは、ひとことで言えばドアが自動的にゆっくりと閉まるようにするための装置です。主に玄関ドアや重いドアに取り付けられ、ドアが勢いよく閉まることで起こる事故や騒音を防ぐ役割を果たします。また、ドアが開けっぱなしにならないようにする役割も。
どのような原理で動いているのかを端的に説明すると、「油圧システムとバネを利用して、ドアの閉まる速度を制御している」と表現できます。ドアが開くときにバネに力が加わり、その力を利用してドアが自動的に閉まります。また、油圧システムがその動きをコントロールすることで、急激に閉まるのを防ぎ、安全にゆっくりとドアが閉まるという仕組みです。
そのため、安全な生活空間を保つためにもひと役買ってくれているアイテムと言えるでしょう。
2. ドアクローザーの種類
ドアクローザーにはいくつかの種類があり、設置するドアの種類や位置によって最適なものも変わってきます。そのため取り付けを考えている方はプロの業者に相談することをおすすめしますが、ざっとここではその種類を押さえておきましょう。
2-1. スタンダード型

スタンダード型は、ドアが閉まったときにアームがドアに対して垂直になるタイプのドアクローザーです。通常、ドアの開く側に取り付けます。例えば、外開きの玄関ドアであれば、ドアの外側にドアクローザーが設置されます。
2-2. パラレル型

パラレル型は、ドアを閉めたときにドアと平行になるタイプのドアクローザーです。主に日本の住宅の玄関ドアに使用されることが多いです。通常、ドアを押す側に取り付けられます。
3. 設置場所による選び方

ドアクローザーを選ぶ際には、前述の通り、設置場所やドアのタイプに応じた選び方が重要です。その選び方の基準を以下でご紹介しましょう。
3-1. 広く開けたい場所には「パラレル型」

玄関や外部に面したドアにはパラレル型が適しています。パラレル型はドアの内側に取り付けられるため、風雨の影響を受けにくく、耐久性に優れています。また、180度までドアを開放できる場合が多く、広くドアを開けたい場所に最適です。
3-2. 室内の美観を保ちたいなら「スタンダード型」
一方、室内ドアやドアの外観を損ないたくない場合には、スタンダード型が良い選択肢です。スタンダード型はドアの外側に取り付けられ、室内からはドアクローザーが見えにくくなるため、室内の美観を保ちながら機能性を確保できます。ただし、設置場所によってはドアが180度開かない場合があるため、周囲の状況も考慮に入れる必要があります。
4. ドアクローザーの便利機能

ドアクローザーには、開閉の安全を保つ役割があることは前述した通り。それでは具体的にどんなふうに機能しているのでしょうか?以下ではドアクローザーのありがたい機能についてご紹介します。
4-1. 速度調整機能
ドアの閉まる速度を調整できる機能です。これにより、ドアが急に閉まってしまうのを防ぎ、ゆっくりと安全に閉まるように調整することができます。
4-2. ストップ機能
ドアを開いたままの状態で固定できる機能です。ドアが一定の角度で止まるように設定でき、物の搬入や換気の際に便利です。
4-3. ラッチング機能
ドアが閉まりきる直前に速度を増してしっかりと閉まるようにする機能です。ドアがきちんと閉まり、隙間ができるのを防ぎます。
4-4. バックチェック機能
強風などでドアが急激に開くのを防ぐ機能です。ドアがある角度以上に開くと、油圧システムが働いて急激な動きを抑え、安全に開閉できるようにします。
4-5. ディレードアクション機能
ドアの閉じ始めをゆっくりとする機能です。車椅子や大きな荷物を運ぶ際に、ドアがゆっくりと閉まるため、余裕を持って通過することができます。
5. ドアクローザーのトラブルと対処法

ここでは、ドアクローザーから音が鳴る、途中までしか閉まらない、勢いよく閉まってしまう、など、ドアクローザーが原因で起こるトラブルをケース別にご紹介していきます。対処法も併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
5-1. 一般的なトラブルとその原因
ドアクローザーで発生しやすいトラブルにはいくつかの典型的なものがあります。以下に、それぞれのトラブルとその原因を詳しく説明します。
①油漏れ
症状:ドアクローザーの本体やアームの接続部分から油が漏れているのが見える場合
原因:油漏れは、ドアクローザー内部のシールが劣化したり、過度の負荷がかかって内部の圧力が上昇したりすることが原因です。これによって油圧システムが正常に機能しなくなり、ドアの動きが不安定になります。
対処法:油漏れが見つかった場合、ドアクローザーは寿命を迎えている可能性が高いです。修理は難しいため、速やかに新しいドアクローザーへの交換を検討してください。
②ドアの閉じる速度が不安定
症状:ドアが急に閉まったり、逆に閉まるのが遅くなったりする場合
原因:このトラブルは、油圧システムの劣化や内部の調整が狂った場合に発生します。とくに、ドアクローザーの速度調整弁が不適切に調整されている場合、閉まる速度が安定しなくなることがあります。
対処法:速度調整弁を調整してみてください。
速度調整弁とは、ドアクローザーに内蔵されている機能で、ドアが閉まる速度を調整するための小さな弁(バルブ)です。通常、ドアクローザーの側面に調整用のネジがあり、これを回すことでドアの閉まるスピードを速くしたり、遅くしたりできます。ネジを時計回りに回すとドアがゆっくり閉まり、反時計回りに回すと速く閉まるようになります。調整しても改善しない場合は、内部機構に問題がある可能性があり、交換が必要です。
③異音が発生する
症状:ドアを開閉する際に「ギーギー」や「カチカチ」といった異音が発生する場合
原因:異音は、アームやリンクの接続部分に潤滑油が不足していることや、ドアクローザー本体が経年劣化していることが原因で発生します。とくに、長期間メンテナンスを行っていない場合に起こりやすいです。
対処法:アームや接続部分に潤滑油を差してみてください。それでも異音が続く場合や、油漏れも見られる場合は、ドアクローザー全体の交換を検討してください。
④ドアが完全に閉まらない
症状:ドアが途中までしか閉まらず、完全に閉まらない場合
原因:ドアクローザーのアームの取り付け角度が不適切であるか、内部の油圧機構に問題があることが原因です。とくに冬場は気温によって油が固まり、油圧が上がりやすくなります。また、ドア自体が歪んでいる場合にも同様の症状が出ることがあります。
対処法:アームの取り付け角度を確認し、必要に応じて再調整します。調整しても改善しない場合は、ドアクローザー自体の故障が考えられるため、交換が必要です。
5-2. トラブルを防ぐための使用上の注意点

ドアクローザーのトラブルを未然に防ぐためには、以下のポイントに注意することが重要です。
①ドアの開閉時に過度な力をかけない
ドアを強く閉めると、ドアクローザーに過度の負荷がかかり、内部の油圧機構やバネにダメージを与えることがあります。これにより、油漏れや内部の破損が発生しやすくなるため、ドアは自然に閉まるように優しく扱うことが大切です。
②速度調整弁の操作に注意
速度調整弁は、ドアの閉まる速度を調整する重要な部分です。必要以上に弁を回しすぎると、内部のネジが外れて油が漏れる原因になります。調整は慎重に行ない、適切な範囲内で行なうことを心がけてください。
③異常を感じたら早めに対処
ドアの動きが普段と違う、音がするなどの異常を感じた場合は、早めに対処することが重要です。放置すると、トラブルが大きくなり、修理では対応できなくなる可能性が高くなります。
6. まとめ
日常的に使っていても意外と着目することのないドアクローザーですが、安全で快適な生活を支える重要な装置です。
やさしい扱いや定期的なメンテナンスを心がけることで、長期間にわたり安心して使用することができます。ぜひ本記事を参考に、ドアクローザーとのスムーズなお付き合いをしてみてくださいね。




